【往還集124】11 むのたけじ

1915年生まれだから、97歳。『希望は絶望のど真ん中に』(岩波新書)を一気に読んで、衰えをしらぬ真直ぐな思索には驚嘆した。自分は、生徒が荒れて授業も成立しない時代、『詞集たいまつ』を50冊そろえて、書写を課題とした。すると荒れ狂っていた生徒たちが、しーんとして取り組むではないか。
そのむのたけじが、横手にいまも健在。この本にも詞集になりそうな文がいくつもある。スペースのあるかぎり、ぬきだしてみる。

「現在は過去の子どもだ」
「歴史の証言は波しぶきではなく、波のうねりの中に聞かねばならぬ」
「地球は、その形だけでなく心も丸いたま球だ。人間たちのまっとうで強い思いは、世界じゅうのどこの人々にも届く」
「人間の尊厳を殺すものは、何であれ必ずみじめに自滅する」
「希望は常に絶望のど真ん中の、そのどん底に輝いている。前夜がつらいと、必ず朝明けはそれだけあたたかい」
(2012年5月25日)