【往還集123】27 修業時代

「飢餓陣営」は佐藤幹夫さんの個人編集誌。個人編集とは信じがたいほどの300頁の厚さ、そして濃密な中身だ。
その37号に「聞き書き 編集者=小川哲生」がある。小川氏といえばすぐれた見識の編集者として、多くに信頼されてきた。自分の『日本児童文学の成立・序説』も彼のお世話になった。
今回の発言のなかで印象にのこったのは、すぐれた批評を二十代から書ける人はなかなかいないという指摘だ。それなりの読書量と、読み込んで自分のものにしていく時間・力量が必要だから。二十代のころは自分の雑誌を持ったりして修業時代を送り、三十代になって少しずつ出てくる、だからどうしても十年の歳月は必要とするーー。
さすが見識ある編集者の言。
このごろ修業時代抜きにして、一発で「出世」チャンスをねらう人が多い。一発を当てて、大物になった気分でふるまう若いのがいると、俳句の分野もこぼしていた。
(2012年3月30日)