【往還集123】25 世界のミヤギ

私にはフクシマのことが他人事だとは思えない。知人の何人もが被害をこうむったという理由だけではない。
あの日、宮城県の女川原発も一触即発の状態だったからだ。もしメルトダウンが起きたらどうなったかを、私は地図上で何度もシミュレーションしてみた。原発から20キロが緊急避難区域になったとしたら、牡鹿半島、女川町のほぼ全域、石巻市も半分は入る。津波の被害の最も大きい区域だ。大川小学校のある釜谷地区も入る。
30キロに広げれば、東松島市、南三陸町にもかかる。退避命令が出たとして、多数の遺体、多数の負傷者を捨て置いて逃れることができるだろうか。そもそも道路が崩壊し、瓦礫が山とあるというのに、バスはどのようにして出入りできるだろうか。
ほんの半歩の差で、この世ならぬ地獄図が展開されるところだった。そして世界のミヤギになって、後世まで名をのこすところだった。
(2012年3月25日)