【往還集123】15 那覇の雪

 ああ、またか。呆れるを通り越した寂しさが。
 那覇市では2004年度から雪遊びのイベントを催している。今回も十和田市から空路運ばれてきた。
 ところが放射能を怖れて避難した人たちが、中止を要請した。線量に異常値はないというのに。怖がるのはわかる。どこに逃げようが自由だ。
 しかしもし雪に放射能が検出されたとしても、逃げ場がなく暮らしている人はいっぱいいる。現に自分もその一人。中止要請をしたとき、その人たちの心には雪国の無数の人々が浮かばなかっただろうか。自分だけ助かればそれでいいのだろうか。
 寂しいねえ。
 少なくとも自分は、沖縄に軍事基地を押し付けていていいと思ったことはいっぺんもない。痛みは分かち合うべきだと考えている。その沖縄に逃れた人が、捨ててきた土地への想像力を廃棄する。
 もっとも、被災圏には悲しいことが山ほどあるから、いちいち憤ってはいられない。
(2月22日)