【往還集123】10「雪おろし」

 雪は、美しい。しかし怖い。毎日のように降りつづくと、しだいに恐怖を覚える。なにしろ家屋のあちこちが、不気味に軋んでくるのだ。こうなれば雪おろしをしなければならない。仙台に家を建てるとき、設計士はここでは雪おろしをするほど積もることはないといった。信用して雪止めもつけなかったが、いきなりの大雪。いよいよ危うくなったので、スコップを手にして二階から屋根へ出る。腰にロープを巻きつけ、その端を机の脚に固定する。これで安心。  屋根のひさし、ぎりぎりまで足をのばし、分厚い雪をおろしていく。汗をかく。やっと終わってもどってきたとき、机に結んだはずのロープがはずれていると気づく。そこには3歳の息子がいて、腕にぐるぐる巻きつけている。「お父さん、ぼくもっててやったよ。」!!!自分は怒る。なにごとかとみにきたその子のママは、笑いがとまらない。今でも思い出しては笑う。
(1月31日)