【往還集123】5「歌集『青白き光』」

 原発のことは何も知らなかった、知らされもしなかったという声がかなり出た。「それはないだろう」と自分は思う。女川原発の計画が出たとき、熾烈な反対運動が起き、自分も加わった。巨大な力には太刀打ちできなかったが。
 原発の町に住みながら意志を貫いた人もいる。佐藤祐禎『青白き光』(いりの舎文庫)こそがその証明だ。1929年大熊町生まれの「アララギ」歌人。
 原発に勤めて病名なきままに死にたる経緯密かにわれ知る
 この子らはいつまで生き得む原発の空は不夜城のごとく輝く
 原発が来たりて富めるわが町に心貧しくなりたる多し
 わが町は稲あり魚あり果樹多し雪は降らねどああ原発がある
 人類が世界で最も悪者と自らに知るとき救はれむ
(1月20日)