【往還集122】37「ため息ののち」

 宮柊二の『山西省』に「おそらくは知らるるなけむ一兵の生きの有様をまつぶさに遂げむ」がある。
 座右の銘にしてきたこの一首を、徹底解明したいと「宮柊二」をはじめたのは二〇〇七年四月のこと。やるからには歌人生成期から見ていかなければと、「初期柊二」を最初の題にした。
次が第一歌集『群鶏』論。それを今日やっと終わった。終わったといっても、目標の入り口にたどり着いたにすぎない。枚数を数えたら538枚になっている。
思わずため息。
 そもそも宮柊二の優れた弟子筋が何人もいるというのに、部外者の自分などが書いていいのか?評論がどんどん売れなくなっている時代、一冊にすることにどんな意味がある?おまけに硬派歌人の人気はがた落ちときている。いまさらなぜ宮柊二なんだといいたげな顔がちらつく。
 ますます溜息が出る。
 —-と愚痴りながら、『山西省』論へ踏み出す準備をはじめている自分。
(12月23)