【往還集122】23「現代歌人の集い」

 きのうは北上市の日本現代詩歌文学館で、第5回「現代歌人の集い」。選者は柏崎饒二、川野里子、篠弘、松平盟子各氏と自分。記念講演は馬場あき子さん。
応募総数は1804首。予想していたこととはいえ、震災詠が実に多かった。やむにやまれずうたった重い歌の数々。
 私の選出歌から。

 どちらから 浪江からです避難して住み慣れし町藤咲きはじむ(松川韶子 福島)

 四照花(やまぼうし)重なりて咲く幾年(いくとせ)も共に眺めし人を喪う (佐 藤歌子 岩手)

 家流れ家財道具のなにもなし玄関の鍵ポケットにあり (佐々木政子 岩手)

 短歌にとって実体験が必須なわけではない前衛期のとき、〈私〉文学を激しく糾弾し、ここを脱することなしに改革はありえないと考えた。だのに実体験に裏打ちされた歌のこの手ごたえはどうしたことだろう。 震災詠が直球で投げかけてくる問いは、これだった。
(2011年11月13日)