【往還集122】22「11年11月11日」

蕃山(ばんざん)上方の早暁の空。透明度のある茜色の雲が浮かぶ。
左側の白いドームが仙台市天文台のプラネタリウム。その後方に「龍の旅立ち」が見られる。

 肩のあたりが冷えて目を覚ました。外気はマイナス1度。
 早暁のベランダに立つと、北方の天文台ドームのさらに後方に、白煙がどんどん湧き上がる。煙とみえるのはじつは月山池に発する水蒸気だ。朝冷え込むと、湖面から生まれ、山間を移動して空へとのぼっていく。これを自分は「龍の旅立ち」と名付けた。
 東方の蕃山へ目を移す。ほの明かりする天空に茜雲が浮く。透明度のある茜色で、これも冷え込みの季節特有の色だ。
 もう冬も近い。動物でいえば、冬眠の準備期間。自分もそろそろ内に籠る用意をしよう。かえりみれば、あまりにもさまざまなことがあって、3月以来、とかく 走り回っていた。それでは内部から枯れ果ててしまう。北国に住むものにとって、この季節は静かに自他と対話し、回復を待つ。願ってもない季節だ。まず、長 く休んでいた加藤周一の著作を開いていこう。
 11年11月11日11時11分にこの章を書く。
(11月11日)