【往還集124】19 目線の低さ・続

『遠く離れて』から、スペースのあるかぎり秀歌を引用する、解説はぬきにして。

生きている者のおごりは世の常の離反のごとく病む人を見る
仕事にもいろいろありて延々と交合をするこの持久力
しげしげと赤子の顔を見つめたり見らるることをまだ知らぬ顔
みづからの器に生きるほかなきを沁みて思うもひとごとならず
かく青き空を見あげて身に迫る何ひとつだに知らぬ吾なり
あんた誰と見あげし顔を忘れめや朝の厨のほの暗きなか
静かだね 母つぶやけば 静かなり 恵みのごときこの世の時間
後ろ手に歩めばこの世の顛末を見抜いたような顔つきとなる
(2012年6月26日)