【往還集124】4 南斜花壇

花巻 イーハトーブ館近くにある賢治設計の「南斜花壇」。春の花で色とりどり。

花巻の賢治学会の会議へ新幹線で向かう。一ノ関を過ぎて水沢にかかるころ、北上山脈と奥羽山脈が左右に連なりはじめる。そして花巻着のころには、はるか北方に岩手山の白銀の姿が浮かび上がる。
本当は新幹線でなく、在来線のほうがゆっくり眺められるし、賢治の目に映った山や川も味わうことができるのだが。
会議まで少し時間があるので、南斜花壇へ。賢治が生前に花巻温泉の北側斜面に設計したのを、イーハトーブ館近くに復元したのである。春にふさわしい、赤・黄・白の花盛りだ。私はここに来るたびに、賢治の才質の豊饒さに、ほとほとまいってしまう。設計したときは東北が極めて貧しかった時代だ。だのにいっぱいの洋花を組み合わせ、ハイカラこのうえない花壇にした。まさに「ハイパー」である。
こういう人物が、どういうわけで此処花巻に出現したのだろうか。天の気まぐれか、それとも恩寵か。
(2012年5月13日)