【往還集123】40 岡井隆『わが告白』・4

最後の章は「第四部 運命を抱きしめて」だ。岡井さんは「原発はむしろ被害者、ではないか小さな声で弁護してみた」をはじめとする歌を発表し、原発擁護派だと指弾されている。
けれどその根本の考えは、筋道ができている。
「原子力という人類がやっと手に入れた最高の宝を魔女裁判にかけてはいけない。」
「自然は、制御不可能で、上手につき合う外ないが、原子力など人間の造ったものは努力すればコントロール可能である。」
この考え方は、吉本隆明の『「反核」異論』にも共通する。コントロール不能状態を身近にしている私には、とうてい賛同しかねる。が、この章にいたって、岡井さんのかなりまともな論調に出会い、感銘さえ覚えた。
第一評論集『海への手紙』の時代。あのなかの知性と抒情性を加えた「朝鮮少女」、敢然と歌会始へ切り込んだ「非情の魅力について」などが連想され、しばし感慨にふけった。
(2012年4月30日)