【往還集123】19 明後日

荒浜地区。あちこちに黄色い旗が、はためいている。

東日本大震災一周年も間近だ。小雪ながら、花束を持って何度目かの荒浜へ。
土台だけになった敷地のあちこちに、黄色い旗がはためいている。荒浜から移転せず、ここに留まって復興させたいという住民の意志表明だ。
波打ち際を歩く。貝殻や細かいゴミが、無数に散乱する。もしかして遺骨が見つかるかと、探し歩く人影もある。行方不明者は、いまだに数千人。このあたりのどこかに潜んでいて、見つけてくれるのを、待ち続けているかもしれない。
だのに、海は、なにごともなかったように、盛り上がっては砕け、砂を滑っては引き返すのみ。「これが自然というものなのだよ、いつまで嘆いていても、甲斐のないことだよ」と、ささやくかのよう。
たしかに。一年の区切りは、死者を自然へと送り出してやる、出発の日でもある。死者を、これ以上悲しませないために、嘆くのをやめる日でもある。それが明後日だ。
(2012年3月 9日)