【往還集123】17 最後の一句

 家内は落語と漫才のファンである。テレビ番組で探し当ててはよく見る。自分も一緒に見るはめになるが、いつしか落語の結末、すなわち落ちの巧みさに感嘆するようになった。最後の一句でどっと笑わせ、「おあとがよろしいようで」と締めくくるこの技。まるで人生の最期を示唆しているよう。
 「おあとがよろしいようで」で退場できたら、最高の人生だ。
 漫才はどうか。どたばたと笑わせたあげく、いきなり「どうもありがとうございました」だ。これまで笑いころげた客は、一気に現実に叩きつけられる。
 このときの肩すかしを食ったような、だまされたような、えもいわれぬ不全感。どうせだますなら、さいごまでだまし続けてほしい。「どうもありがとうございました」では、あまりにも不細工で興ざめ。
 「おあとがよろしいようで」に拮抗できるほどの一句が出ないうちは、芸としてまだまだ未熟。これが私の素人漫才観。
(2月28日)