【往還集123】12「岩手方言の人」

 このうち「日取り」「日照り」論が強くて、両者、なかなか譲らない。で、何回となく論争は蒸し返されてきた。私は、賢治の他の文例からしても「日照り」説だと考えているが、賢治に聞くほか正解はない。とはいってもそうもいかないから、すべてをふくめていいのではという、はなはだしまりのない説をとっている。なにしろ「北ニケンクワヤソシヨウガアレバ ツマラナイカラヤメロトイヒ」とあるではないか。番組では、標準語で考えるからまずい、方言にして読めばいいのだと、自説を披露した。つまり、こういうこと。岩手方言は、「ひ」も「し」もはっきりしない。全体を口ごもったように発言するから、「ヒドリ」「ヒデリ」も混ぜてしまえばいい、と。「せっかくだから「雨ニモマケズ」を方言で朗読してみてください」と乞われて、やってみた。するとわれながら、久しぶりに岩手方言の人になりきっていった。
(2月5日)