【往還集121】43 「花巻へ 1」

 9月21日の賢治祭につづき、22日は宮沢賢治賞・イーハトーブ賞の授賞式。一夜かけて台風が荒れ、各地の交通機関が遮断された。自分も例外でなく、嵐に 負けそうになりながらも、何とか花巻に到着。なにしろこちらは賞選考委員、ズルをするわけにはいかない。委員は七年務めたことになるが、今年は特にイーハ トーブ賞に苦労した。賢治精神を実践した人に贈るのが賞の趣旨だが、三陸の大震災でブドリのごとくに献身し、亡くなった人は何人もいる。そういう人をさし おいて、賞を贈ることができようか、仮に殉職者に贈るとなっても、個人も団体も特定などできない、それならどうするかで、委員は迷い苦しんだ。結局、本賞 は「無数のブドリへ」の気持ちをこめて該当なしにした。そのかわり奨励賞は、東北を拠点としてする活動する彫刻家安斉重夫氏と落語家川野目亭南天氏二人に 引き受けていただいた。
(9月22日)