【往還集121】29「夏の終わり」

勢いよく咲いたホウセンカ。
急に元気に咲きだした朝顔。

夏、早暁4時。机に向かうまえに、ベランダに出て頭を冷やす。すると三方の森から、ヒグラシが湧きあがり、ホトトギス・ウグイスも合唱に加わる。一夜鳴き つづけたヨタカは、そろそろ眠りにつく。お盆が過ぎるころから、虫の音に主役はかわる。そして八月末、ススキが穂をのばし、空気にも秋の感触がする。この 時期になると、ひと夏のことが顧みられる。自然のめぐりは同じようでも、微妙に違う。去年、火を噴くように咲いたネムは、今年は勢いがない。長年、アゲハ の住処になっていたサンショウの木が、何の予告もなく枯れてしまった。反面、いつもはしょぼくれていたホウセンカが赤・臙脂・白とも全開だ。伸び具合がよ くなくて心配していたアサガオも、急に開きはじめた。人間同様、木にも花にもそれぞれの事情がある。さて、秋の感触がしてくると、この夏に読んだ本につい て語りたくなる。で、本の話を。
(8月29日)