【往還集121】28「そこから、閖上へ」

小学校の体育館。拾得品の写真が展示されている。

 荒浜から閖上への道路も通れるようになった。途中の集落には壊滅家屋がいまだ立ち並び、廃船も捨て置かれたままだ。閖上小学校へ。震災以来、救援基地に なっていたが、今は自衛隊も引き上げた。体育館から校舎の二階、三階へ通じるピンク色の階段は、しっかりしている。ここを使って子供たちは、難を逃れた。 体育館の中は、拾得品の展示場になっている。泥を洗い落とした写真、カバン、ケータイ、卒塔婆、位牌、賞状……。あらゆるものが、所狭しと並ぶ。ひとりの 女の人が、未整理の写真の区分けに余念がない。さっきから写真の一枚ずつをめくっていた男性が、「あった!」と声を上げる。女の人が「よかったねえ」と近 寄り、ビニール袋に入れてあげる。復興とは死者を乗り越えること—-といってしまったが、それは半面でしかなかった。失ってならない記憶は、生者が次へ踏 み出すための力でもあった。
(8月17日)