【往還集121】11「大川へ 1」

 大川小学校へ行きたい。行ってどうする?霊を慰める?哀悼する?そんなきれいごとは、許されるわけがな い。ただ、行って頭を垂れたい。そうしなければ、震災から前へ踏み出せない。そんな気持ちにかられていた。だのに、なかなか踏ん切りがつかない。その理由 は、物理的にいえば道路も災害地も救援車や工事車で混雑しており、一般車は邪魔になるだけだからだ。第二の理由は、被災圏内にいるものが惨状の地に入り込 むことの〈ルール違反感〉だ。どのような顔をして入ったらいいのか、物見遊山の顔では住人を傷つける。記者・ルポライターの顔になら、なれないことはな い。が、そんな他人行儀はとても居たたまれない。では、どんな顔で?わからない。きれいな理屈は思いつかない。だのに行きたい、行かねばと自分を促すの は、そこに起きたことがあまりにかわいそうで、つらいからだ。現場に立ちたい。そして無力に頭を垂れたい。
(2011年7月11日)