【往還集121】5「震災詠・続」

 歌誌「熾」はさいたまが発行地だが、気仙沼の会員が何人もいる。その6月号から。 大川はよどみ澱のごとく様を変えあまたの船・車・屋根を沈めいる 小野寺洋子
リユック背負い毛布を提げて避難所へ友尋ねしが名簿にはなし
「屋根にあがれっ!」切羽詰って男が叫ぶ非常梯子で必死に屋根へ 大原都芽子
屋上の片すみにある・・青空・・・トイレ恐くない恥ずかしくない仕方ない
思い出も家屋も人も未来をもねこそぎ飲み込むにっくき津波 後藤善之
水底に瓦礫の下に友眠る冷たかろうに苦しかろうに
圏外の人の歌も、あげておく。
報道に映像に打ちのめされながら粉々になった言葉をさがす 川原ゆう子
当事者でないことの深さは果てしなく朝になれば勤めに行く
(2011年6月8日)