【往還集124】21 ウグイス

家の隣りは空地になっていて、ススキで埋めつくされる。
梅雨に入るころからウグイスが鳴きはじめる。朝、昼、夕とかけて「ホーホケキョ」をくり返す。どうやら空地に巣があるらしい。ウグイスは小さくて地味な色をしている。そのくせ声は透き通り、かなり遠くへまで伝わる。
鳴き声はふつう「ホーホケキョ」と表記するがよくよく耳を傾けるとそんなものではない。

「ホーホチキョ、キョキョキョ」
「ホーホィチョ、キトキトキト」

などなど。
このウグイス語を人間語に訳すと、

「ホー、でべそ」
「ホー、だめじゃ」

となっていく。
私ははじめのころ、ウグイスを飼わずとも飼っているようなものだと悦に入っていた。ところが庭木や電線に止まって逃げも隠れもしないさまに、「もしかして、このウグイス、人間を飼っているつもりではないか」と思えてきた。
こちらも、飼われているような、改まった気分になってきたのは不思議。
(2012年6月29日)