【往還集123】36 カタクリ・続

仙台の川内に、東北大学附属植物園がある。私は学生時代から今日にいたるまで、数限りなく足を運んでいる。園内に植物標本の展示室があり、カタクリも掲示されている。
その説明書きで、開花するまでに7年を要すると知ったときは、息がつまった。
若い日には1年、いや1か月、1週にすら、さまざまなことが凝縮されている。7年先は、とても見通すことができない。
しかし年齢を重ねるにつれて、時間に自らをゆだねられるようになってきた。
それを跡づけるのが22歳からはじめた、書写という行為だ。『万葉集』を毛筆で写し終わるのに24年、『古今集』2年、『新古今』4年、『源氏』7年。目下の『正法眼蔵』は4年目に入る。
書写をやることにどういう有効性があるのかは、我ながらわからない。時間の流れに己を添わせ、己を消し去る、そういうことが自分の体質に合うといえるのみ。
カタクリの季節の所感である。
(2012年4月21日)