【往還集124】1 初ヨダカ

夕べ、いきなりキョキョキョキョという声がした。
え、まさか、こんなに早く。
窓を開けると、まぎれもないヨダカだ。例年なら、夏が近づくころに鳴くというのに。 ヨダカですぐに連想するのは「よだかの星」、そして宮沢賢治だ。今年も「仙台文学館ゼミナール」の時期となった。自分が担当する「宮沢賢治を読む」は6回目を迎える。その準備に入ったところなので、ヨダカが激励にきてくれたのかもしれない。
ところで今回とりあげるのは「鹿踊りのはじまり」と「セロ弾きのゴーシュ」。これまで何十回目となく読んできて、再度読んでみたが、特に「鹿踊りのはじまり」には、ほとんど打ちのめされてしまった。「非の打ちどころのない傑作」というだけではたりない。感想を語ることばなど、どこからも出てこない。目もうつろに、ぽかんと口をあけるばかり。こんなことで、講座をやっていけるのかと、心配になってきた。
(2012年5月9日)