【往還集123】18 雪嶺

2階から泉ケ岳方面の雪景色を眺望する。
釜房ダムの彼方に連なる蔵王連峰。

 3月に入った。この冬は寒冷続きで、雪も多い。おかげで二階の窓から、泉ヶ岳方面の雪嶺を何度も見ることができた。とりわけ大雪の朝は、森から、山巓から、すっかり白銀に被われる。その規模は壮大なのに、まるで箱庭の趣である。
 さらに壮大な蔵王連峰を眺望するなら、釜房ダムへ行くのが最上だ。
幸い今日は、久しぶりに朝から晴天。チャンスを逃さじと、車を走らせる。秋保を抜け、山道を越えると、一気に湖面が開ける。
 まだまだ氷結があり、パズル状に断片が散らばる。
 その彼方に連なるのが蔵王連峰だ。猛々しい起伏、彫の深い襞、そして鏡面のように輝く白銀の山肌。雁戸山(がんとさん)、地蔵岳、熊野岳、刈田岳、屏風岳、不忘山。それぞれに独得の形状を持ちつつ、連鎖する。
 人間界になにが起きようが、微動だにしない。終始、無言。あくまで清く、美しい。
これでいい。そう、雪嶺はこれだけでいい。
(3月1日)