橋本氏は「まひる野」の歌人。
直接お会いしたことがないのに、その作風の自在さに魅かれ、先輩歌人にもかかわらず「きてんさん」と呼んでは書簡の交流をつづけてきました。
「うた新聞」2019年1月号にも近刊『聖木立』の書評を書かせてもらいました。
病弱の若い日を過ごし、90歳にたどり着いた心境を
「しんしんときこえぬ耳を宙(そら)みみと名づけてひとり星のこゑきく」
「不全は不全にしてしかも全ならむ すくなくともわれ一己の場合」
などに読みとることができます。
この書評が発表になって間もなく、ご本人から大きな字の礼状が届きました。目がかなり不自由になり、しかも酸素ボンベの手放せない状態になっていました。
その橋本氏の訃報を知ったのは今朝の新聞。死去したのは4月8日、享年90です。『聖木立』が自力で編んだ最後の歌集となりました。
また1人貴重な歌人を喪いました。
(2019年4月16日)