
バス通りから家へと通じる坂道には、数本のヤマザクラがある。例年、ソメイヨシノが終わる頃になって、満開になる。満開とはいえ、色も形も控え目で、寡黙この上ない。それでいて、よくよく仰ぐとやはり美しい。人生の懐かしさーーみたいなものも感じさせてくれる。
藤沢周平原作、篠原哲雄監督の映画に「山桜」がある。舞台は庄内、一度目の夫を病気で失い、二度もまた不幸な結婚生活を送る野江。
ある日、ヤマザクラの一枝に手を伸ばすが、届かない。すると通りがかりの武士が折ってくれる。以前に縁談があり、自分から断った相手の手塚弥一郎だ。
手塚は、私腹を肥やす重臣諏訪を切り捨てた罪で、幽閉されるが、野江は思慕を募らせていくーーというのが粗筋。
この物語の花は、やはりヤマザクラでなければならない。
自分は録画した「山桜」を2度続けて観、さらに懲りずに、3度目を観ている最中です。
(2013年4月29日)