目下大相撲大阪場所。
私はまだテレビのないラジオの時代、双葉山・栃錦・若の花・鏡里・朝潮などなどに夢中になった世代です。
それだけに相撲界に問題が生じて放送中止になったときは残念でしかたありませんでした。
時代がちがうのだから力士だけに伝統を求めるのは無理。それはわかっている、しかし単なる興行でなく、神事の要素もある、そこまで消えてほしくないと思っていました。
図らずも、無観客ではじまった大阪場所に実現したのです。
これまでは館内いっぱいの観覧者がテレビ画面に映りました。そのなかに内館牧子さんを見つけたりすると、こちらまで盛り上がりました。
ところが今度はしーんと張りつめた静寂。土俵の土の割れ目もはっきり見える。そして呼び出しや行司の透徹した声。土俵の塩の色彩の鮮やかさ。そして最後の弓取り式。これこそが神事にふさわしいと、改めて思わせてくれるのでした。
(2020年3月17日)