【往還集147】6 医師リウー

目下のコロナ騒動は、日本脱出が最良の方法でないことを思わせてくれます。
なぜなら中国・韓国のみならず欧米にも広がり、いうなれば「どこへ行っても無駄」だからです。
それならば自分の足場で知恵を出し合い、踏ん張ろうということになります。自分だけはなんとか生きのびようと、右往左往する人はいるかもしれない(そういう人はいつだっている)。同時に〈此処〉を踏ん張り抜こうとする人の存在を私は信じることができる。
コロナ騒動が高まってきたとき、脳裏に浮かんだのはカミュの『ペスト』です。
最初に読んだのはいつだったかはっきりしませんが、歌人岡井隆がきっかけだったことは、確かです。
当時壮年医師でもあった岡井氏が、自分を『ペスト』の主人公医師リウーに重ね合わせたことがあります。「隆」は「たかし」ですが「りゆう」とも読みますから。岡井ファンの私は原作を手にしました。 
(2020年3月16日)