【往還集146】11 学校帰りのこと

それは小学5年生のときのことでした。
教室に入るなりOさんが泣いて訴えるのです。うちの犬がいなくなったので探したら、チョーセンの家の壁に皮になって干されていた、父ちゃんとワケを聞きに行ったら、鉄道の脇に死んでいたので皮にしたといい張る、あれは絶対ウソだ、つかまえて殺したんだーー。
Oさんと散歩中のその犬を見たことがあります。毛のふさふさした名犬でした。
当時町はずれに、廃品業を営む家があり、粗末な服装で、髭もぼうぼうの朝鮮人が住んでいました。
その異様な風体を不気味がって、子どもたちはチョーセンと陰口し合っていたのです。Oさんが泣きながら愛犬のことを語ったとき、チョーセンへの怖れと憎しみが湧いたのにはそういう下地がありました。
それから数日たった下校時のこと、黒牛を引きながら町の裏通りを行く男を見かけたのです。
こちらはランドセルを背にした同級生4人。
(2019年9月12日)