【往還集145】3 『ボタン穴から見た戦争』(岩波現代文庫)

スベトラーナ・アレクシエーヴイチの書を少しずつ読んできて、やっと終りました。
1941年、ナチス・ドイツが旧ソ連の白ロシアへ侵攻。人口の4分の1が犠牲になる。そのとき子どもだった人々の証言を1冊にしたのがこの書。

「私はオハネでしたから、爆弾が飛んで、空中でヒユーと鳴ったり、落ちていくのはどんなだろうと前から思っていました。それで、地面に伏して、頭からオーバーをかぶっていても、爆弾が落ちる様子をボタン穴から見ていました。」

から題はとられています。
凄惨な体験がいかに子どもたちに刻印されていくか、その証言の1篇1篇は、読むものの胸を打ちます。
これがなぜ優れた〈文学〉たりえているか。スベトラーナさんが「敵」「味方」という区分けを一切せず、戦争という〈事実〉そのものに焦点を当ている、それによって〈人間〉を抉りだしているからではないかと、読後の私には思われました。
(2019年4月22日)