【往還集145】30 穂村弘という〈新人類〉・続

「新人類出現!」を印象付けられたシーンがあります。
カレが第1歌集『シンジケート』を出した前後だったと思います。
岡井隆氏の企画で、歌合会をやったことがあります。場所は岩波書店の会議室、召集されたのは10名ほどの歌人。
なかに、どこかネクラの感じのする若者がいました。初対面のカレでした。
批評会がはじまり、カレの発言の番になるときちんとした論理で展開し、しかも膝のうえには小型パソコンを置いて指を自在に動かしている。ほかの人は誰もそんな機器を持っていない。
「ついに〈新人類〉が現れた!」と私は直感。
休憩時間になってトイレへ。
隣に並んだのは岡井氏。顔は前方へ向けたまま、

「穂村さんって、なかなか論理がしっかりしているなあ」

としきりに感心する。
それに同意する自分。
今にして思えばカレを呼んだ岡井氏自身、どれほど力量ある新人か、まだ測りかねていたにちがいありません。
(2019年4月12日)