【往還集145】27 神山睦美という批評家

なにかの会合のおりに「神山睦美という批評家を知ってる?」と聞けば、大半はノーと反応する(自分の出る会合は短歌関係が多いせいもある)。
たまに「知ってる」という返事があってうれしくなるが、「彼の書くこと難しいねえ」とつけたされてがっくり。
という私自身も、彼の博学さ、思索の深さには十分手が届かないところがあります。もっとわかりやすく表現すれば、広く知られる批評家になれるのにと、ひそかに口惜しい思いもしてきました。
けれど彼は、あえて〈売れる〉書き手であることを選ばず、アカデミズムの場とも距離を置き、「在野の文芸評論家」でありつづけてきました。この「在野のーー」は、『日本国憲法と本土決戦』(幻戯書房)の「はじめに」で彼自身が使っている語です。
私はこの1冊を少しずつ読んできて、「そうか彼の思索していることはこういうことだったのか」と合点したところがずい分あります。   
(2019年4月8日)