以上は吉田恭大(やすひろ)『光と私語』(いぬのせなか座)に触れるための前奏でもあります。
吉田氏は1989年生まれ、私にとっては未知の歌人。
「さすが若さだねえ
とまず造本に目を見張る
。縦16、2㎝、横11、1㎝、厚さ2、7㎝。
頁を開けば、ほぼ1首組で長方形、正方形などの単色のイラストがある。
「バス停がバスを迎えているような春の水辺に次、止まります」
「笑わなくてもあかるく、そして、地下鉄の新しい乗り入れの始まり」
「サーカスのテントが建てばそこからの季節がいやに広々とあり」
人物や景物の表情に、また情感よりもバス停とか地下鉄とかサーカステントの広場とか、いわば舞台構造とその平行推移自体に関心を向けている。
平行推移はあってもドラマはない、それでいて無機質や虚無の方向へ傾斜しているわけでもない。
この不可思議さに出会ったとき、私はシャワーを浴びた気分になるのです。
(2019年4月26日)