私の弱点は抽象思考が苦手なこと。したがって数学ばかりでなく哲学もダメ。
たとえばサルトル。『存在と無』『自由への道』など読んだことはある。けれどほぼチンプンカンプンで挫折。だのに世界的な哲学者として評価されている。きっと自分の頭脳が劣悪なせいだろうと長い間思っていた。
それが加藤周一の「サルトル私見」(『加藤周一自選集7』)を読むにおよんで「そうか、こういうことを考えてきた人だったのか
と、やっと見えてきたのです。
加藤周一は、サルトルの思想世界で評価している2点をあげています。
第1は「具体的・特殊なものと、抽象的・普遍的なものとの間に、絶えず行われる弁証法的な操作」。
第2は「世界の客観的な秩序と個人の経験のかけ替えのなさ、歴史の過程と人生の一回性、その二つの軸の交るところに位置づけられた人間の全体を、いかに理解し、叙述し、意味づけるか、ということ」。
(2019年3月24日)