ひとりの選手が世界の舞台に立ち、持てる最高の能力を発揮しようとするとき、出身地や国籍を意識するでしょうか。
なかには国家を背負って悲壮な戦いをする選手はいる。
そのため行き詰まって自裁してしまう悲劇もあった。
しかし自国を離れ、他国人をコーチにするのも常態となっている今日、スポーツはすでに無国境状態になっている。
それにもかかわらず、出場するには国籍が必要で、スポンサーや応援体制がからむことも少なくない。
だから、〈無国籍のただひとりの競技者〉として表舞台に立つことは難しい。
国家自体が前面に出て選手育成するような場合はなおさら困難になる。
世界レベル級の選手になればなるほどこの両者に引き裂かれる。
それをうまく切りぬける知恵も養っていかざるをえない。
大坂なおみ選手に見たのは、知恵にまだ染まらず、辛うじて〈無国籍者〉も保っている輝きだったのではないでしょうか。
(2019年1月27日)