彼は俳句の作り手でもありました。全句集にはいくつもの秀句が並んでいます。
私は彼の思想と行動には賛意を覚えませんが、いかなる人間であっても、文学表現をまえにしては一切が平等であるというのが、基本態度です。
彼は「あとがき」に書いています。
「毎年季節の変わり目になると同じような句を詠んでしまいます。直截的且つ即物的に反応してしまうのです。死刑囚として監獄に拘禁されているため自然に触れる機会が少なく、寒暖の差によってしか季節の変化を感じられないからかもしれません。あるいはまた、獄外で過した時間が長くはなかったため、かつてなしたこと、見聞したことが季節の変化と結びついて色褪せずに記憶されているからだとも言えるでしょうか。」
私は思うのです、季節の移ろいがふんだんにあるのでなく、ごくごく限定されていたからこそ、鋭く、そして豊かに感応されたのではないかと。
(2018年10月24日)