【往還集143】44 「心から」「おもしろい」

私の気になるのは外来語だけではありません。
歌を作る人ならことばにもっと繊細であってほしいのに、この頃いやに目立つ2語がある。
それは「心から」と「おもしろい」。
「心から」は特に東日本大震災以後多くなり、

「心からお見舞いもうしあげます」
「心より悼みます」

という具合に使われる。
政治家はさらに常套語として口にする。
「心から」という人にかぎって、心から思っていない。
「おもしろい」は短歌の評によく使われます。

「歌集を読んでおもしろかった」
「今度の作品はおもしろい

という具合に。
「おもしろい」「おもしろかった」は感想ではあっても批評とはいえない。「おもしろかった」のなら、どこに魅力の根源があるのかを解くのが評というもの。うまくことばが見つからないからとりあえずほめておく気持ちはわかるが、それは評ではない。
というわけで私は「おもしろい」を評として使わないようにしています。
(2018年10月22日)