【往還集143】29 「ちびまる子ちゃん」・続

ほかのクラスの生徒まで読みはじめ「先生、ワタシのあのコト、マンガにしてはダメだからね」とあらかじめ口止めに来るのも出てきた。
そのコトもマンガにしたのはいうまでもありません。
当時私は何冊かの学校論も出していました。そのときの編集者もマンガを知り、「佐藤先生のは評論よりマンガがおもしろいから出版しませんか」と話を持ちかけてきたのです。
その褒めようにカチンときて承諾しませんでしたが、本音のところをいえば、趣味で画くならいいとして、本気でやるには基礎をきちんとやらなければダメだということに気付いていたのです。
すなわち人を描くには人体デッサンを積んだうえでなければーーと。
マンガ家の人たちがどういう修行をしてきたのか、すべてを知っているわけではありませんが、優れた描き手はまず人体描写がしっかりしています。
私には基礎から学ぶ時間が、もうありませんでした。
(2018年8月28日)