学生のとき国文担当に橋浦兵一(ひょういち)先生がいました。
ある日の講義で『鎖国』は凄い本ですと、ほとんどいきなり話したのです。
それから40数年もたって古書店で偶然に初版本を見つけ、遅まきながら読んだというわけです。
「太平洋戦争の敗北によつて日本民族は実に情けない姿をさらけ出した。」
とはじまり、この国に欠如したものは何かを検証した本です。
検証のために世界の植民地化の経緯を掘り起こしていきます。
西洋とりわけスペイン人のメキシコ、ペルーの侵略ぶりもその過程でとりあげていったのです。
先進国は黄金を手に入れんものと上陸し、異質の文明を破壊しまくる。けれど完全に破壊し尽くすことはできない。
それらが貴重な遺産として残りました。
遺産とは、なによりもそこに人間が生きていたという証です。
私は展示品の1つ1つに魅せられながら、つぎつぎと手帳にスケッチしていきました。
(2018年8月24日)