【往還集143】22 「木の家」

秋保の温泉街から西へ奥まったところに「木の家」はあります。
床・柱・天井・テーブル・イスすべてが木材ですから、文字通り「木の家」です。
林に囲まれていて閑静、耳を澄ませば渓流の音もします。
コーヒー館ホールにはピアノも置かれていて、コンサートも時々開かれます。
ここは私のお気に入りの場所。四季の折々に訪れてはコーヒーを口にします。
テーブルのうえの淡い木洩れ日、音もなく行き来するオハグロ、空(くう)を漂うコーヒーのかおり。
こういうとき、

失われた時を求めてーー

というフレイズが浮かんできます。
ほかならぬプルーストの代表作。
若い日に開いたことがありますが、うまく作品世界に入れず途中で挫折。けれどタイトルだけはよく思い出されます。
最近、文庫本の全巻を揃えました。

「時間はどんどん失われるばかり、機会をのがしてはだめだよ」

と、その全巻がこちらに語っています。
(2018年8月19日)