岩瀬成子近刊の『地図を広げて』(偕成社)を読み進めながら、子ども時代ということを考えました。
「わたし」は4人家族。
お母さんが弟の圭を連れて実家に帰ってしまう。
以後「わたし」はお父さんとの2人暮らし。お母さんが病死したため、圭が戻ってくる。
ちょっと入り組んだ筋書きです。
その間の心の動きが描かれているのですが、手伝いに出入りしている巻子さんの一言に、大切なモチーフが潜んでいる気がします。
「子どもって、なにかと苦労だよ。大人になるまでのあいだの荒波を一人で越えるんだもんね。波の大小はあるにしても。子ども時代をよく生きのびたなって、この歳になって思うこともあるの。親は自分が育ててやったみたいな顔をしているけども。ちがうんだよね」
〈子ども時代をよく生きのびた〉という記憶を持つ大人が近くにいるかどうかで子どもたちの安心感も、ずい分ちがってくると私は思います。
(2018年8月12日)