【往還集143】19 高野長英・続

学生になったころ、母に「あんたも長英と似てるところあるから気をつけらいよ」と忠告されたことがあります。
ふだんはおとなしい(ふりをしている)のに正論になると曲げない性質があるので、そこを突いてきたのです。
もっともこちらは、長英について通り一遍のことしか知らない。
機会をとらえて詳しく調べなければと思ってきて、手始めに読んだのは佐藤昌介『高野長英』(岩波新書)です。
それによると、幕末の蘭学者としてはトップ級で、強烈な自我の持ち主でもありました。 
高野家の相続放棄宣言のなかに伺えるのも、

「封建的諸制約から解放された自我の貫徹」
「個人の自立」

です。
それは当時の社会通念から大きくはみだすことでもありました。
「蛮社の獄」に連座して追われる身となり、ついには追いつめられて自刃してしまう起点もそこにあります。
この日本に、あまりにも早く生まれすぎた人物だったのです。
(2018年8月11日)