【往還集143】17 科学の空白

江里昭彦氏は個人誌「ジャム・セッション」を刊行しています。
江里氏は京都大の事務職員だったことがあり、そのとき学生中川智正氏に接します。
やがてオウム事件の〈中川〉と向き合うようになり、彼の俳句やエッセイを掲載していきます。
私自身はもとよりオウムの犯罪を少しも容認しませんが、中川氏の句がしだいにうまくなり、エッセイも極めて理知的なのには、号を重ねるごとに驚いてきました。
これだけの人物がなぜ犯罪集団に深入りしてしまったのか、根拠をもっと深く知りたいと思っていたときに刑は執行されてしまいました。
1つの糸口はあります。12号の「私をとりまく世界について(その一一)」。
彼は、科学には空白部分がありそこに何かを感じる人が宗教や信仰を生み親しむといいます。深入りしないようにするにはどうするかを、彼は省察しつづけましたが、不十分のまま不帰の人となってしまいました。
(2018年8月7日)