【往還集143】5 秋保の田植踊・続

踊も終盤にさしかかったころ、会場席にいた人がいきなり立ち上がって口上をのべはじめます。
それが終ると今度は舞台の長老らしき人が中央に立って、お礼のことばを返します。
この構成はどの踊にも共通していました。前者が「褒め言葉」、後者が「返し言葉」です。 
その1部を「湯本の田植踊」から紹介します。

「しん~暫くう~ 暫し止めし拙者には 東岳(あずま)が下の蛙めで 米の成る木をまだ知らぬ 米の成る木を知りたさに やっとやっと~

「只今御大勢御見物の御中様より どなた様やらは存じませぬが 滔々たる御弁舌をもって、お褒めの言葉を下しおかある段 誠にもって有り難き幸せに存じたあてまつる」

このようなセリフを、おどろくばかりに長々と交換し合う。まるでオペラのよう。
この構成はどのようにして形成されたのか、他の芸能にもあるどうか、大いに興味深いことです。機会を見つけて調べてみます。
(2018年6月30日)

【往還集143】4 秋保の田植踊

秋保里センターに展示されている「長袋の田植踊」の早乙女の衣装

ユネスコ無形文化遺産に指定された「秋保(あきう)の田植踊」を広瀬文化センターで見てきました。
秋保は峠を1つ越えた地にある、私の好きな山里です。
そこに古来田植踊が伝承されてきましたが、現在も保存されているのは
「湯本の田植踊」
「馬場の田植踊」
「長袋の田植踊」
の3つです。
それらを1度に観覧する機会を得ました。それぞれに特徴はありながら、共通点も認めることができます。
開幕すると舞台の奥には、濃紺に花をあしらった衣装の早乙女たちが後ろ向きに並ぶ。長い帯を垂らし、花笠もかぶっている。
その前に弥十郎(やんじゅうろう)と呼ばれる男の子2人が登場し、「口上」を語る。
以下、唄に笛や太鼓もとりいれながら、

「いれは」
「一本そゞろぎ」
「二本そゞろぎ」
「鈴田植・はね太鼓」
「銭太鼓」
「褒め言葉」
「返し言葉」

と展開されていく。それに合わせて早乙女たちが、田植の仕種を舞にしていきます。素朴ながら優雅さも伝わってきます。
(2018年6月30日)

【往還集143】3 教師も間違う

「河北新報」には長期連載の「止まった 検証・大川小事故」があります。
大川小問題の訴訟は、目下最高裁へ移っている段階。訴訟であるかぎりいずれ白黒が決められる。マスコミもまた大いに反応する。 
けれど白黒の決着は、ずいぶん多くのものをとりこぼすものです。
この連載のすぐれているのは、その多くにまで視野を広げ、多角的に検証しようとしているところです。
今日の6月6日付にとりあげられているのは、南海トラフ巨大地震の対策を練る高知県黒潮町について。
小学校の防災公開授業を取材した記者が、終了後に先生に話を聞く。

「教師も間違う。最終的には自分で判断し、命を守れる力を付けてあげたい」

と応える。
私はこの一言に、やっと学校も教師も〈本当〉のことをいい、マスコミもとりあげるまでになったのだと感銘を覚えました。
この点については、「路上」前号の「倒木を描きながら」にも書きました。
(2018年6月6日)