【往還集142】16 古典と現代

河田育子歌集『園丁』(紅書房)の「『園丁』附語」に「私は、長い間自分の歌の方向がまったくわかりませんでした。」とあります。
なぜなら平安朝の和歌に強い魅力を感じていたから。
その後短歌を詠むことをはじめるが、ものすごい違和感があった、「自分の親しんでいる和歌と、近代以降の短歌の世界との差異から発している」、そのためずっと途方にくれた感じがつづいた。
この一文を読んで、自分とは逆方向だったのだと感慨を覚えました。
私が短歌を本気でやろうとしたのは、学生になった1961年でしたが、そのとき近代短歌にも古典にも歴史的産物以外の関心がなかった。
短歌といえど文学であり、文学であるかぎり現代と直結すべきだと考えました。その現代とは安保後の状況でしたから、いかにして思想詩としての短歌を作るかという問題に直面し、七転八倒したのです。
こういう自分には古典が遠い存在でした。
(2018年5月20日)