子どものとき祖父がウサギを飼っていました。
「みづまさ(通雅の方言読み)、ミツパ(クローバー)とってきてけろ」とたのまれ、フゴにいっぱいつめてきます。
それが餌です。
リンゴ箱を改造し、ワラを敷いた中に入れられた真っ白な子ウサギは、しだいに大きくなります。
それにともなって、こちらの情愛もつのります。
ところがある日姿を消す。
夕食になって「ウサギ汁だ、うめ(うまい)がら食ってみろ」といわれる。
肉はめったに口にできない貴重な栄養源。けれどつい昨日までの、真っ白な顔と真赤な目が思い浮かんで、どうしても食べられない。
そのうち学校で「兎追いしかの山」を習うようになりました。これが自分には
「ウサギ、おいしい」
としか聞こえない。なんと残酷な歌なんだ、なぜこんなのが名歌なんだと思いつづけてきました。
漢字まじりの歌詞として覚えるようになったのは、ずっとあとのことです。
(2018年4月28日)