【往還集142】2 なみの亜子『「ロフ」と言うとき』(砂子屋書房)から

「路上」終幕―などと弱音を吐きましたが、トツトツならキーボードを押せます。
ゆっくりトツトツと打っていきます。
なみの亜子さんは西吉野の山深い地に住んでいた歌人。
現代風とちがう特異な世界があり、私はそれに関心を持ってきました。
第4歌集のタイトルもいきなり謎。後半にさしかかって

「杖の名はロフストランドクラッチという「ロフ」と言うとき息多く出る」

がある。これからとったことがわかります。夫が脊髄を傷め、杖と車いすを使うことになる。
ついに13年間の山家生活から夫の出身地岸和田へ移住するという背景を、歌集からうかがうことができます。
作品も、夫の受傷に関わるのが多く、それに加えて母親のアルツハイマー、山家生活の表情などが印象にのこります。
どれも捨てがたいテーマですが、ここでは地味な山家生活の歌に焦点を当ててみます。    
(2018年4月21日)