わが若き日の抒情歌に
「秋の野のまぶしき時はルノアールの「少女」の金髪の流れを思う」
があります。
正式の名称が「イレーヌ・カーン・ダンヴエール嬢」だとは迂闊にも知りませんでした。
昨夜のEテレ、日曜美術館はこの1作品だけをとりあげていた。
それほどに人気のある絵画なのです。
モデルはパリのユダヤ人銀行家の長女イレーヌ、8歳。
その後苦難の道を歩んだこともわかりました。イレーヌの娘も2人の孫もアウシュビッツで死亡。肖像画もナチス・ドイツに没収される。戦後74歳の本人に返還されるが、3年後に武器商人として財を築いたコレクターの手に渡る。それが現在も保存されている。
この数奇な経緯と8歳のイレーヌはもちろん関係がない。
だのに透きとおる肌、流れる髪、静かに開かれている瞳、薄水色のドレス、背景の木洩れ日などを見ていると、美しくもかなしい時間の流れが想われるのです。
(2018年3月12日)