ヘーゲルの『歴史哲学講義』(下)をあいかわらず少しずつ読んでいるのですが、時々ギョとする個所に出くわします。「第四部ゲルマン世界」に
「騎士の優勢な武装にたいして、やがて、べつの技術的な手段が発明されることになるのです。」
と書き出され、火薬のことがとりあげられている。
火薬とは武器のこと。この発明によって
「人間を物理的な暴力から解放し、階級の上下をなくす主要な手段となりました。」
ともある。さらに
「むしろ火薬によって、理性的で洞察力のある精神的な勇気が主役の座を占めるようになったというべきです。」
と。ヘーゲルの時代には、先見性ある武器・武力論だったでしょう。
その歴史的価値は認めながらも、背筋が寒くなってくるではありませんか。
現在の武器は技術力さえあれば男女を問わず操作できる。
殺害の感触からも逃れられる。
けれど犠牲になるのはいつでも武器と無縁の無力な人間です。
(2018年3月3日)