時田則雄氏は1946年北海道生まれ。帯広に広大な農地を持ち、百姓を貫いてきました。
百姓といってもこちらの田畑を耕すイメージとはちがう。
トラクターを駆使して、掘りまくり、採りまくるといった感じのようです。
第1歌集『北方論』以来どの歌集も読んできました。
さすがの彼も72歳、肉体労働は相当きついはず。その分、というべきか、今度の第12歌集からは、自然のなかにおのれをゆだねる気息が伝わってきます。
「新しい光が今朝も地にあふれ影がゆつくり動きはじめる」
「おもひきり背筋伸ばして大の字になりをりしあわせとはこんなもの」
「玉葱がつーんと伸びてゐる真上消えそこねたる朝の月浮く」
こういう広大な作品世界はちまちました都市生活の中からは生まれてこない。
「長いながい冬去りたれば野に出でてわれはみどりの炎とならむ」
「かぜに吹かれ雨に打たれて生きて来た いますぐにでも土に還れる」
(2018年2月25日)